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精神世界へようこそ・似非(えせ)宗教

 世の中にはいろいろな宗教があります。キリスト教、仏教、イスラム教、ヒンドゥー教、ユダヤ教、これらは世界の五大宗教です。日本では、日本古来の神道があります。私たち日本人にとって馴染みの深い宗教は仏教と神道だと思います。仏教といっても、天台宗や真言宗、浄土真宗、日蓮宗など、宗派も数多く、そしてまた、これらの宗教から分岐した新興の宗教団体も数多くあります。神道においても仏教と同様に、枝分かれした数多くの分派があるようです。これらの主だった宗教団体以外にも、有象無象(うぞうむぞう)の霊能者や行者が創立するカルトなどがあり、こうしたものを含めると、いわゆる、宗教を奉じていると言われる団体が世の中には夥(おびただ)しいほどの数で存在しているのではないでしょうか。

 これらの宗教団体の中には、宗教の基本である倫理道徳に則って普遍的な宗教教義を奉じている正統的な教団も、もちろん多数あると思いますが、一方で、宗教の本質を知らず欲心のある人々を、現世利益を餌にして強引に入会させ、そして布施や寄付、その他諸々の名目で信者から金を巻き上げることだけをもくろんでいるような、宗教を営利ビジネスとしている教団や、宗教の名を騙(かた)って、人々から金をだまし取ることを目的にして働く、悪質なカルトや偽宗教団体も数多くあるようです。

 物質至上主義的な日本の現代社会ではあっても、宗教に関心を抱いている人々も多く存在することでしょう。概して精神的な人々は宗教に心引かれるようであり、そのような人々は何らかの形で宗教に関わっているのではないでしょうか。自己の精神的成長をめざして自分が興味を抱く特定の宗教の門を叩き、そしてその宗教が奉じている教えを学ぼうとする人の、その志は誠に立派だとは思いますが、しかしながら、人が特定の宗教や宗教団体に関わる前に、考慮しなければならない重要な事柄があります。それは、特定の宗教に関わる前に、人は宗教の本質について或る程度の知識を持っていなければならない、ということです。これは非常に重要なことです。と言うのは、宗教の本質を知らずして、好奇心から、あるいは心に湧き上がる抑えようのない一時的な宗教的熱狂から、やみくもに特定の宗教に関わるならば、人は、その宗教団体が奉じる教えの是非を判断する前に、その宗教の教義・教条に容易に洗脳されてしまうからです。宗教とは精神に関わる事柄ですから、物事に対する是非の判断がつけられないような、理知や知性が未発達な人々は、その精神の未熟さゆえに容易に洗脳されてしまうのです。そして、そのような人々は、その宗教で是とされるドグマに洗脳されて、自分自身で考える力を失い、あるいは自分で考えさせられないように骨抜きにされ、教祖の言葉を鵜呑みにする盲信者やドグマ一辺倒の狂信者になってしまうのです。

 人が自己の精神的成長をめざして特定の宗教に関わろうと思うならば、人はまず、その宗教が人々を精神的に向上させることができる真正な宗教であるのかどうかを厳正に判断する理知的な見識を持たなければならないでしょう。宗教に関わる物事を正しく判断できるような知性を持つためには、人は、古来より多くの人々によって奉じられ、現在でも正統と考えられている宗教に関する書物や、人間の生に関して思索している哲学書などに触れて、普遍的な宗教に関する概括的な知識を身につけるべきでしょう。

 宗教の顕教的な教えとは、人が倫理道徳に根ざした生を導いて智慧と人徳を積み、円満にして高尚な人格者となるように、もっぱら人格修養に努め、自己の霊性を、神の質である善性、神性へと向上させていくことなのです。しかし、宗教の密教的な方向に進むと、人は目には見えない霊の世界や心霊力に関わることとなり、そのときには、物理的な事柄ではない不可視の広大無辺な霊の世界に関わるのですから、相当に慎重でないと、人は魑魅魍魎(ちみもうりょう)の幽冥界に迷い込んでしまうことになるでしょう。そして、人格的にも知性的にも未発達な人は、霊の正邪が判別できず、邪霊や悪霊によって憑依され、精神的に破綻をきたしてしまうことになるでしょう。

 宗教の本質とは、精神と霊性の向上をめざし、自己の深奥の自我本性である神性意識を認識して、その神性を開示することであり、そして最終的に自己を、高次意識界である神界へと上昇させることですから、密教的な行法を積んで心霊や幽冥界と関わることは、その意図に反したものとなってしまうでしょう。ですから、人々にとって、宗教が真実に意図するものを把握することが先決であり、そのために宗教や哲学の本、また霊性において卓越した人々が著わした人生論などの書物を読むことによって、普遍宗教、すなわち生の意義と目的に関する知識を得ることが大事なのです。宗教書や哲学書を読み、深く考えることは、自己の知性を発達させることに対して大いに役立つでしょう。知性を発達させることは、人間にとって非常に重要なことです。高い知性を持つことによって、人は物事の是非善悪の判断が誤らないようになり、そしてまた、形而上学である宗教は誰にとっても解りづらいものですが、その宗教の奥深い本質に関してもよく解るようになるのです。

 普遍宗教の知識を得ずして、一時的な心の熱狂によって、いわゆる宗教教団と言われるような団体に関わると、その教団のドグマに洗脳され、そしてそれが自分にとって唯一の正しい宗教にように思い込んで、盲信者か狂信者になってしまう可能性がきわめて大きいでしょう。似非宗教が標榜する心霊力獲得やその他諸々の現世利益に目晦まされて、人が似非宗教に関わると、そのような人は宗教の真贋を見極める知識がないのですから、往々にして似非宗教教団の被害者になってしまうのではないでしょうか。

 実際、何らかの益が得られると思って、教団に入会、入信した人たちが、悪徳な似非教祖によって多額の金をだまし取られたり、あるいは洗脳されて思慮分別をなくして犯罪行為に加担させられたり、常軌を逸した行動を示すようになって普通の社会生活ができなくなったりと、似非宗教によって引き起こされた犯罪や犯罪まがいの不祥事がこれまでに幾度となく世間を震撼させてきたことは周知の事実です。もちろん、正しい顕教的な教えのみを奉じている宗教も世の中にはたくさんあるでしょうから、そうした正統的な宗門においては、人は理性を失うことなく地道に自己の人格修養の道を歩んでいけることでしょう。しかしながら、世の中には宗教の名を騙った似非宗教団体が多数存在するのですから、そんな悪徳宗教ビジネスに引っかからないように、宗教に興味を抱く人々は本当に気をつけなければなりません。

 正統な宗教、顕教が意図する目的は、基本的に人格修養にあるのであり、それ以外の何ものでもありません。ですから、既存する宗教の門徒にならなくても、精神進化の道は自分自身で歩んでいけるのです。宗教とは、人が人格修養を通して自己の精神性と霊性を発達させて、今は未顕現の自己内部の神性を開顕させることにすぎないのですから、宗教の基本である倫理道徳に根ざした高潔な生を導いていれば、人は霊性の道において自然に進歩向上しているでしょう。従って、宗教のこの基本的な意図を人がしっかりと把握しているならば、既成のどのような宗教に関わらずとも、人は自分の精神性と霊性を高めていけるものだと思います。

 基本的に、宗教というものはビジネスにはなり得ないものです。宗教は、人が人格修養を通して、自分自身で自己の精神性と霊性を高めていくものですから、他者から指図されて、自己変革を果たすものではありません。宗教の本質は、精神と霊性の向上に関わることであり、物質的な事柄を一切排除することですから、現世利益を標榜して、胡乱な心霊力を以って奇跡めいた事象を起こし、そしてそれを信者に金で購わせるようなことは断じて宗教とは言えないのです。従って、宗教をビジネスにしている者や団体は、正統な宗教を行じているわけではありません。それはあくまでビジネスであり、宗教ではありません。こうしたまやかしの宗教家や宗教団体は、真実の宗教について無知蒙昧な人々を取り込んで、布施や寄付という名目で金を得るだけの、似非宗教にすぎないでしょう。そのようなまやかしの宗教に関わって、人は自分の愚かさを露呈して恥をかくことがないように、まずは宗教の本質を理解するように努めることが先決です。そのために、人はさまざまなことを学び、自分自身で智慧を培い、真正の宗教とまやかしの宗教の違いを見極める知性を持つことが最優先の事柄でしょう。人が自己の知性を発達させるには、多くの本を読み、人々や自分が関わる人間関係から多くのことを学び、自己の知性を涵養していくほかないでしょう。多くを学んで物事の道理を知り、高度な知性を身につけ、そして人格修養を果たした人だけが、真実の宗教と似非宗教との違いが解るのです。それゆえ、巷にあふれる、ビジネスを目的にした似非宗教に関わることがないように、人はまず自己の精神性の向上によって人格修養を果たし、そして真実の宗教に触れて、奥深い霊性の道を歩んで、自己のうちの神性を開示するように努めることでしょう。

 

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